第12章 第十一話 夢現の大地
店員たちに案内される前、放ったユキサの言葉には、何か感じるものがあった。
歌姫<プリマ>はユキサが唱えたものを実現させるもの。
言霊の魔法としていつも使っているが、その気になれば相手を強制させる事も可能なようだった。
「今まで使った所を見た事がないから…おそらく何かリスクがあるんだ」
「だろうな」
「それより、夫婦限定のパーティだったんだね」
不二の言葉に神田が苦い顔をする。
ある意味、これもあったから4人に頼んだのかもしれない。
確かにティエドールだと、ユキサも彩音も夫婦とは見られないだろう。
寄りかかっていた壁から、神田がス、と立ち上がった。
同時に、店員が控室へとやって来る。
「おまたせしました。奥様方の準備が整いましたのでご案内いたします」
案内された先で待っていたのは、見違えるほど綺麗になったユキサと彩音の姿だった。
振り返ったユキサと彩音も、神田と不二の姿を見て少し照れくさそうにしている。
「彩音、すごく綺麗だよ」
「しゅ、周助だってすっごくかっこいいよ…!」
もはやどこから見ても夫婦のような2人の反応を、神田とユキサが見ていた。
彩音は赤を基調としたロングドレスを着ている。
マーメイドラインのそのドレスは、スラリとした体型の彩音にはぴったり合っていた。
対して不二は紺色の一般的なタキシードを着ている。
神田とユキサ、2人はと言うと。
「そういう衣装も似合うね。神田はやっぱり黒だよね」
「お前は白だな」
互いの服装をじ、と見てそう言った。
ユキサは白いベルラインのドレスを着ている。
前の方は短く、後ろに向かって長くなっているものだ。
神田は黒の燕尾型のタキシードを着ている。
4人共、並ぶと色合いもとても綺麗だった。
ふと、神田がユキサの胸元を見て眉を顰めた。
「おまえ…」