第12章 第十一話 夢現の大地
「き、緊張する…」
彩音がお店の前で息を呑んだ。
目の前に広がるのは、豪華なドレスが並ぶ高級なお店。
立っていても何もならないので、4人はその店へと入る。
「いらっしゃいませ。何かご入用ですか?」
「パーティ用にいくつか見繕って頂けますか?」
「パーティ…もしかして王宮での、ですか?」
不二の言葉に微笑んだ女性店員が問いかけてくる。
頷くと、少々お待ちくださいと店員が奥へ引っ込んだ。
「そういえば、お金って大丈夫なの?」
「教団の経費で落ちるって元帥が言ってたよ」
並べられている様々なドレスを見ながら彩音が聞くと、ユキサが答えた。
コムイさん、また頭を抱えてないといいけどと彩音はこっそりと思った。
程なくして、奥から男性店員を連れて先程の女性店員が戻ってくる。
「おまたせしました。旦那様方はこちらへ…」
「だ、旦那!?」
驚いた彩音が思わず口にすると、ユキサがバッとその口を塞いだ。
「すみません。新婚でまだ呼ばれ慣れていなくて…」
店員たちに訝しげに視線を向けられ、ユキサがそう答える。
旦那、という言葉に神田や不二も驚いて入るが、ユキサが何か誤魔化そうとしているために何も言えなかった。
「…ほら彩音。私たちの新婚のお祝いにパーティに参加してみようって話だったじゃない。夫婦だけが参加できるパーティなんだから」
「あ!そ、そうだったね…」
「お騒がせしてすみませんでした。『お気になさらず、どうぞよろしくお願いします』」
綺麗なドレスに見とれて大事な事を忘れていたと彩音が曖昧に笑う。
ユキサが言葉をはっきりと口にすると、店員たちは何事もなかったかのように笑いながら奥へと案内してくれた。
それから数時間が経った。
正装した神田と不二は、ユキサと彩音の着替えを控室で待っている所だ。
「…言霊を使ったな」
「そうみたいだね。…あんな使い方を見たのは初めてだ」