第12章 第十一話 夢現の大地
「パーティね…」
「正装って…ドレスアップしろってこと?」
不二と彩音が呟いた。
王宮へ向かう汽車の中で、4人は頭を抱えていた。
わかれて情報収集するのは分かるが、何故王という偉い立場の人にティエドールが行こうとしなかったのか、なんとなく理解した。
パーティにはなるべく若い子が参加した方が違和感がなくて良い。
マリは目が見えないので、さすがに不審な目を向ける者も多いだろう。
今、ユキサには神田、彩音には不二がついて行動を共にしている事が多い。
結果、この4人で王宮へ乗り込む事となったのだ。
「パーティは一般客も自由に出入りできるものらしいね」
「ふん、俺は外で待つ」
全く興味のない神田は素っ気なく言ったが、不二が緩く首を振った。
「駄目だよ神田。ユキサと一緒にいないと」
「…少しくらい離れた所で問題ないだろ。お前もいるんだ」
「あのねぇ…」
不二が神田へ顔を近づける。
少し驚いた神田が身を引くが、不二は構わず神田へこっそり耳打ちをした。
「僕だってずっと一緒にいられるわけじゃない。情報収集もあるし、彩音もいるんだし」
「あいつは1人でも大丈夫だろ」
「ドレスアップしたユキサが、本当に1人で大丈夫だと思ってるの?」
ぴくりと神田が反応を示した。
そうしてユキサの方へと視線を向ける。
ユキサと彩音は、汽車に乗る前に見つけたパンフレットを見ている。
王宮のパーティについての詳細が書かれているものだ。
「知ってる?最近の教団内でのユキサの噂。神田が連れてきた時より肉付きも良くなって美人になったって人気なんだよ」
「…………」
「それにこの間の酒に酔った時の事。あの時男たちの視線がどれだけユキサに…」
あれはお前のせいだろと神田が不二を睨みつける。
「とにかく。そんなユキサがドレスアップをして男たちが放っておくと思う?」
再度問われ、神田は大きく舌打ちをした。
その舌打ちにユキサと彩音は首を傾げていた。