第10章 第九話 沈黙の棺
「お供します。ティエドール元帥」
「キミたちはどうするかな?」
ティエドールに聞かれたのはユキサたちだ。
本来なら教団へ戻るまで護衛の予定だったが、ティエドールは戻らないと言った。
元々弟子だった神田たちはともかくとして、一エクソシストであるユキサたちは無理についてくる必要はない。
ユキサは彩音と不二と顔を見合わせ、頷き合う。
「元々元帥の護衛につくつもりでしたから。教団へ戻らなくてもそれは変わりません」
私たちもお供します、と言ったユキサに、ティエドールが頷いた。
もうすぐ夜が明ける。
バルセロナの街へ戻ったティエドールと5人は、階段に座り込むアレンとリナリーを見つけた。
「やあ、キミたち」
「ティエドール元帥!それに…ユキサたちまで」
「アレン、久しぶり」
彩音と不二とはイエーガーの所で一緒だったが、ユキサとはその前に教団で別任務で別れたっきりだった。
アレンとリナリーは、ユキサたちがバルセロナでAKUMAと戦っていた事を聞いていた。
無事でよかった、とホッと息をついた2人。
「この街での戦いは、大変だったみたいだねぇ…」
「はい、でも私たち…間に合わなかったんです」
悔しそうに呟いたのはリナリーだった。
アレンもやるせない表情をしながら言葉を続ける。
「結局、僕たちは何も出来ませんでした。しかもあんな多くの犠牲者が出てしまって…」
ユキサはその言葉に俯く。
思い出すのはデイシャの事だ。
「あの、元帥は教団へは戻らないんですか?」
「私は私の任務を全うしなければならない。…適合者を探す任務をね」
ではユキサたちも?とアレンが聞き、3人を見る。