第10章 第九話 沈黙の棺
「うん。私たちもティエドール元帥と一緒に行くつもり」
「そっか」
「…アレンたちにも、大事な任務があるんだよね?」
彩音が問いかけて、アレンがハッと思い出した。
「襲われた元帥は4人。あと1人残っている」
「師匠…」
そうだ、とティエドールが頷いた。
「ま、あいつがすんなり護衛を受け入れるとは思えないけど」
「あ、でも…師匠の居場所の検討が、全然つかなくて」
なんだ、そんな事かとティエドールが小さく笑った。
ティムキャンピーには自分作った者の居場所を探知できる能力がある。
さあ行きなさいとティエドールが促すと、ティムキャンピーがぱたぱたと飛んだ。
キョロキョロとしてティムキャンピーが、東を向いて止まった。
「…我々は、負けたわけじゃない。伯爵との戦いは、これからだ」
はい、としっかり頷いたアレンとリナリーを見ながら、ユキサも海を見た。
陽が昇り始めた地平線を見つめ、目を細めた。
「いってきまーす!!」
「アレン、リナリー!またね~!」
手を振る2人に彩音が叫び、ユキサたちも手を振った。
「やっと行ったか…ったく、手のかかる」
「いや、これからさ。彼らの前には、長く大変な道が広がっているよ」
―――――きっと。
ティエドールの言葉と共に、辺りに柔らかな風が吹く。
「さあ。私たちの旅もこれからだ」
「はい」
歩き始めたティエドール、神田、マリに続いて、ユキサたち3人も歩き出した。