第10章 第九話 沈黙の棺
「ユキサ!」
蝶がユキサへと襲いかかった。
ユキサを呼んだデイシャの前へ、男が素早いスピードで現れる。
「お前はこっち」
「ぐっ!!!」
「デイシャ…くっ…!」
殴られて吹き飛ばされたデイシャ。
蝶が邪魔をして動けないユキサは、小さく舌打ちをすると大鎌のイノセンスをしまって羽を発動し大きく飛び上がる。
そんなユキサを見てお?と言葉を漏らす男と、ユキサを追う無数の蝶。
「汝、光と闇に分かち、その動きを封じる!!『プリズンセイヴァー』!!」
蝶から逃げながら唱えた魔法で、光の柱が出現する。
その瞬間、光の柱で蝶が捕われた。
「へぇ…やるねぇ」
「はぁ…はぁ…っ」
ふらりとその場に降り立ち、大鎌を出現させる。
次の瞬間、ユキサが男へ飛び込んだ。
咄嗟に受け止めた男が、ユキサの速さに驚いた。
だが攻撃の軽いユキサの表情と足元にある羽を見て、からくりに気づいた。
「はーん…なるほどね」
「あっ…!!」
大鎌を弾き飛ばされ、男に首を掴まれる。
絞まっていく感覚に、ユキサがもがいた。
「はっ…!」
「キミはイノセンスを3つ持ってるのか。いやぁ~そんなエクソシストもいるんだなぁ」
でも、3つ同時発動は、リスクがあるみたいだねぇ。
ハッとするユキサだったが、すぐに小さく笑った。
「だ、から……な…に…」
「おわっ!!」
ギュンッとベルが飛んできて男がユキサを離す。
よろけながらも男と距離を取るユキサ。
男がゆっくり振り返ればそこにはデイシャの姿がある。
「あれ~?動けないほど痛めつけたはずだったんだが」
なんで動けるの、お前。
不気味に笑った男に、デイシャの額から汗が流れる。
「ッ…隣人ノ鐘<チャリティ・ベル>!」
「ハハハ!そんなのオレに効くわけがないだろ!!」
ガッとデイシャが殴られる。
楽しいと笑いながら殴られるデイシャを見ながら、ユキサが歯を食いしばった。