第9章 第八話 魔女の棲む村
うっ、とユキサが言葉を詰まらせる。
見つめてくる神田の無言の圧が強く、ユキサがはぁと息を吐いた。
「なんて説明したらいいか分からないんだけど、その…」
目覚めたいけど目覚めたくなかった感覚。
光と闇があって、その境界線でどちらにもなれない、なりたくない自分。
何かの役目があるけれど、それは本当の自分の役目じゃないかもしれない。
「それから」
どうせ本当の願いだから伝えてしまおうとユキサは言った。
「神田が、あの人と並んで歩いてた」
金色の髪をした女性がいた。
突然告げられた言葉に神田は目を見開く。
「神田、これは紛れもない私の本当の気持ち。あの人と出会えますようにって。私はずっと思ってるから」
未だ掴んだままの手をぎゅっと握りしめるユキサ。
「…俺は…」
神田が何かを呟こうとした時、部屋にノック音が響く。
ユキサが返事と同時に手を離した。
立ち上がり扉の前へ行く。
「ユキサ、よかった!目を覚ましたんだね!」
「うん、ごめんね迷惑かけて…ってスノウ!」
ユキサが眠っている間に戻ってきたらしいスノーベルがユキサに飛び込んでくる。
クスクス笑いながら話す2人の横で、不二が神田の方を見ていた。
―――――置いていかないで…神田…。
そう言って涙を流し眠っていたユキサを思い出す。
「っ…お前があの人なら…」
どんなに、よかっただろうか。
神田、と不二に声をかけられ、神田は部屋を出た。