第9章 第八話 魔女の棲む村
「そう…あなたには、私にさえ分からない闇があるのね…」
ゴホッと血を吐き、ソフィアはその場に倒れる。
「ソフィア!」
「来ないで!」
構わず、彩音が近づいた。
涙を流す彩音に、ソフィアが小さく微笑む。
「魔女のために、涙を流すなんて…」
「だって!こんなの…酷すぎる…」
ただただ幸せに生きていたかっただけなのに。
ソフィアも、アンジェラも。
「馬鹿ね。でも…」
ありがとう。
そう、ソフィアの声が小さく聞こえたような気がした。
―――――白い。
何処を見ても、白、白、白。
ふと吹き付ける冷たい風に、あぁここはあそこだ、と理解する。
初めて彼と会った場所…。
そう思った時、蓮華の花が辺り一面に咲いた。
目の前に現れた彼の手を取っているのは、金色の髪を靡かせる女性。
あぁ…見つかったんだね…。
(待って…)
よかった、これで私は…。
(置いていかないで…)
体が光り出す。
『あなたの役目を、忘れてはいけません』
役目、…そう、私の役目。
ゴボ、と血を吐く。
胸から出るのは鈍く光る刃。
『お迎えに上がりました…。…、 様。あなたは【そちら側】じゃない』
―――――目を覚まして。
分からない。
私は…目覚めていいの?
起きろ!と声が聞こえ、ユキサの意識が浮上する。
さらりと黒髪が頬にかかった。
綺麗な顔が目の前にある。
伸ばした手は、温もりに包まれていた。
「神田…」
「おい」
前にもこんな事あったようなとぼんやり考えているユキサを見て、神田が眉を顰めた。
大丈夫と小さく微笑み、ゆっくりと体を起こす。
「私、いつの間に寝て…」
「AKUMAの攻撃を受けたんだ」
簡単な説明だったが、あの時の彩音たちの様子から、ユキサはなるほどと理解した。
次いでソフィアの事を問えば、神田が黙り込む。
「終わったんだね」
あぁと呟く神田が、何処か落ち着かない様子でいた。
ユキサが首を傾げる。
「どうしたの?」
「…。お前、どんな夢を見ていた?」
ぴくりと体が反応してしまった。
前回の時と違い、今回ははっきりと覚えているその夢。
もちろん、その反応を見逃す神田ではない。
「おい」
「えーと…あんまり覚えてないというか…」
「視線が泳いでるぞ」