第9章 第八話 魔女の棲む村
「…大丈夫。私はここにいるよ」
周助、と呼んだ。
『彼女』はきっと、そう呼んでいただろう。
少しの間を置いて、不二の瞳に光が戻る。
「…?あれ…?」
「周助!だ、大丈夫?」
ユキサから体を離した不二に、彩音が駆け寄ってきた。
大丈夫だよと返した不二は、ユキサに向き直って小さく謝罪した。
自分のした事をうっすらと覚えているのだろう。
神田の鋭い視線を感じるのもそのせいだと不二は心の中で神田にも謝罪した。
「夢を見ていたんだ」
不二から聞いた話も、彩音と同じものだった。
多分彩音と不二は同じ夢を見ていたのだろう。
しかし結局、どうして同じ夢を見たのか、そしてこの小屋へやってきたのかは分からないままだった。
辺りを警戒しながら、4人とソフィアの父親が小屋を出る。
「あ、あの…あなた方は、これからどうなさるおつもりですか…?」
ふと、何かに怯えたようにして父親が口を開いた。
神田とユキサが先程のAKUMAたちを思い出し、この辺りの調査をしようかと思った時。
父親が慌てたようにして言葉を続けた。
「じ、じじじ実は、この先を真っ直ぐ抜けると村から出られます。どうです?村から出ませんか…!?」
私も一緒で構いませんので…!
神田が父親を怪訝そうに見つめた。
どうしてだ?と声をかければ、父親が震えたように縋ってくる。
「た、助けてください…!お願いします…!この村には、魔女がいるんです…!!!」
逃げましょう!と縋る父親に、神田ははっきりと断わった。
「聞きたい事がある。魔女はどこにいる?あの小屋には最近まで誰かが住んでいた形跡があった。そいつはどこにいる?」
まさか魔女は―――――。
神田の言葉に、父親が叫び声を上げてその場を去った。
「…神田」
「間違いないだろうな。魔女は…村にいる」