第9章 第八話 魔女の棲む村
「これは…」
「3人の体を強化したの。少しの傷なら再生もできる」
彩音と不二には、AKUMAの弾丸を受けても大丈夫だと付け足した。
神田はすでにこの言霊を受けた事があるため、特に反応をしていなかった。
ありがとう、と彩音と不二が礼を言って、戦闘を再開する。
それからすぐ、AKUMAはほとんどその場から消えた。
ユキサは後衛戦闘の彩音のサポートに回っているとはいえ、エクソシストが3人もいるのだ。
数が多くてもAKUMAが滅ぼされるのは時間の問題だった。
だが3人の周りにいたAKUMAが片付いたその時。
「動くナ!!」
3人がその言葉に振り返った。
そこにはユキサの首に斧を当てているAKUMAの姿があった。
捕まっているユキサはうんざりしているような、なんとも言えない顔をしていた。
それを黙って見ている神田と不二。
彩音はそんな2人を見ながら少しだけ焦った表情をしていた。
「動けばこの女の首を斬り落とス!」
「レベル1のAKUMAでも、それなりの知能は持ってるのね」
「何!?コノッ…」
「イノセンス発動!アーリ!」
AKUMAの言葉は続かなかった。
ユキサの背中から生えた翼が、背後のAKUMAの体を貫通した。
AKUMAを押し出した反動で斧がユキサの首を少しだけ掠る。
「ぐああああ!」
AKUMAが爆発する前にその場から飛び立ち、ユキサが3人のもとへ降り立った。
「掃討完了かな?」
「ユキサ、首大丈夫?」
すぐ治るから大丈夫と彩音に返す。
六幻を鞘に収め、神田が歩き出したため、3人も後を追ったのだった。
「ここが…ダンケルン村?」
しばらく歩き、陽が傾いてきた頃、4人は寂れた村に到着した。
「随分静かだね…森にはAKUMAがいたけど、この村は大丈夫なのかな?」
「AKUMAがいる様子はなさそうだけど…」
家の中には人の気配はある。
だが窓から覗いた人は、4人の姿を見るなりカーテンを閉めてしまった。