第9章 第八話 魔女の棲む村
「ここ通りかかったのは偶然だよ。私たちには別の任務があるから」
「え!?」
「さっさとミッテルバルトの町へ戻ってろ。すぐに別のエクソシストがやってくるはずだ」
冷めた神田の言葉に3人が苦笑い。
ユキサがコートの中からスノーベルを呼んだ。
「スノウ、あの人をミッテルバルトまで送ってくれる?」
「あ、それじゃぁセイも一緒に。スノウは通信できなかったよね?」
ユキサに続いて、不二も自らのゴーレム(青龍)を起動した。
町への道は遠くはないが、念のためだ。
スノーベルは体は小さいのに力持ちである。
人1人くらいは運ぶことが出来るので、いざとなったらゴズを掴んで飛んで逃げる事は可能だろう。
何かあった時や教団に連絡がとれるように、不二のゴーレムも同行する。
スノーベルと青龍はこくこくと頷いてゴズの元へ。
そんなああああ!と叫びながらスノーベルに引っ張られていくゴズ。
「でも神田。ゴズさんの言ってた村って多分…」
「例の魔女が棲むって噂のダンケルン村の事だろうな」
「じゃぁ私たち、どっちにしても通るんだね…」
はぁとため息をつく彩音は気が向かないようだった。
教団が調査に出てたという事は、何かしら奇怪な現象が出ているのだろう。
という事は魔女が棲んでいるというのは、間違いではないのかもしれない。
ぴた、と一番前を歩いていた神田が足を止める。
3人も周囲の気配に辺りを見回した。
木々の影から、斧を持った複数の男たちが出てくる。
「ダンケルンの村の人…なわけないよねぇ…」
「だとしたら凄い歓迎だね」
そう言って彩音と不二がイノセンスを発動する。
男たちの姿が、AKUMAへと変わっていった。
「行くぞ六幻…!イノセンス発動!」
「歌姫<プリマ>発動!」
神田が走り出すと同時に、不二も敵へと向かう。
木々が生い茂る中では動きにくいことを考え、ユキサは言霊のイノセンスを発動した。
「彼の者たちに力を与えん、『レインフォース』!彼の者たちに再生の光を、『リジェネレイト』!」
ふわりと3人の体が光り出す。