第1章 プロローグ 導かれし三人
ララと呼ばれた警戒が解けない少女を刺激しないように、ゆっくり言葉を選んで話しかけていた彩音だったが、もう1人がスッと立ち上がった。
「その友達の所へ…案内してくれるかい?」
「は、はい…」
―――――顔が見えない。
仮面のようなものをつけている姿に、一瞬ビクリとした彩音だったが、今頼れるのはこの人しかいないのだと、不二の元へ戻る事にした。
「周助…!」
「彩音…」
戻る途中で、不二が壁伝いにゆっくり歩いてきているのを見て彩音は駆け寄った。
彩音の姿を見た不二はホッとしながらそのままズルズルと壁に座り込む。
大丈夫!?と声をかける彩音の後ろからやってきた2人組に、不二は少し警戒心を露わにした。
「大丈夫。この人達に助けを求めたの」
「……」
警戒は解かないままだが、彩音の言葉にそう…と頷いた不二。
「グゾル。ここは危ないわ…あの怪物がまた来るかもしれないでしょう?」
「そうだね。…地下の方に案内しよう」
怪物、という言葉に彩音と不二は困惑するが、今はグゾルと呼ばれた人物と、ララの2人についていくしかなかったのだった。
「ここならあの怪物にも見つからないと思う」
「ありがとう」
案内された場所はかろうじて休めるような小部屋だった。
古ぼけた藁の上ではあるが、体を横たえることもできそうだ。
不二の体を支えながら、彩音はお礼を言いながら藁ベッドへ近づく。
軽く手で払った後、不二を寝かせた。
「周助、体は大丈夫?」
「大丈夫だよ…ちょっと全身が痛むけど」
「外傷はそれほど酷くないみたいだ。ここで少し休むといい…ゴホッゴホッ」
「グゾル!」
咳き込んだグゾルの体を支えるララ。
グゾルの体はどこか悪いのかと見つめる彩音だったが、グゾルはすまないと一言謝罪した。
「体が良くなったらここを出るといい…ここは怪物が来る」
「そういえば怪物ってさっきも言っていたけど…」
ここはどこで、怪物とは何なのか。
そして彩音と不二は自分たちの身に一体何が起こったのか、分からなかった。
彩音の言葉を聞きながら、グゾルも少し驚いていた。