第1章 プロローグ 導かれし三人
「君たちは旅人かと思っていたが…。だがしかし」
このような軽装で、ほとんど持ち物も無く来るはずがないか、と。
グゾルは言葉を続けた。
「ここはマテール。怪物は…数日前から姿を見せるようになっていてね…」
なんとか逃げ隠れてはいるのだけれど、と言いながらグゾルはまた咳き込んだ。
何か病気なのか、と心配して彩音は近づこうとしたが、不二が腕を掴んで止める。
不二の行動に察したグゾルは、ララを連れてその場を離れる事にした。
「とにかくここは危険だ…。動けるようになったら町から逃げた方がいい」
―――――私たちは地上で様子を見るから、ここからは絶対に出ないように。
そう言って部屋から出ていったグゾルとララを見ながら、彩音は不二に問いかけた。
「周助?何でさっき…」
「今、僕たちの身に何が起こっているのか分からない…マテールという町も僕たちは知らない。怪物、というのも…」
分からない事が多すぎて、下手に動いたりしない方がいいと不二は判断したのだ。
未知の病原菌等がもし彩音に降り掛かってしまったら…。
グゾルに非はないが、不二は冷静にこの状況を考えていた。
「だけど…グゾルの言う通り、動けるようになったらこの町は出た方がいいね」
「でもどこへ向かうの?何も分からないんじゃ…」
だがこのままここにいても仕方がない。
先程地上から地下へ案内してもらった時、不二は町の様子を伺っていた。
しかし町は静寂に満ちており、建物も荒れ果て、人々はグゾルたち以外いないのだと確信したのだ。
ましてや怪物が出るというのなら、この場所にいるより外に出た方が良いと判断した。
「きっと、長い旅になると思う。けど…僕はここで諦めたりはしない」
必ず君を…救ってみせるから。
そう言い、不二の右手が彩音の左手を掴んだ時だった。
―――――キィィーーーン!
「ッ!この光って…!」
「あの時と同じ…!?」
ショッピングモールの屋上での光と同じだった。
だがあの時と少し違うのは、その光が2人を優しく包み込んだのだ。
困惑する2人だったが次の瞬間、お互いの手に何かが出現する。