第8章 第七話 終末への幕明け
だが今も悲劇は生まれ続けている。
アレンも大切な人を亡くし、その手で大切な人をAKUMAにした。
苦しみや悲しみを知っているからこそ、それが大きな力になる。
より多くの魂を救済するために―――――。
イエーガーの言葉に、ぽろりとアレンの瞳から涙がこぼれた。
「さようなら~!!」
汽車の窓からアレンと彩音が身を乗り出して手を振る。
「イエーガー元帥、すごく良い人だったね」
「えぇ…。まるで僕たちを本当の弟子のように…」
会えて良かった、と嬉しそうに笑う3人の乗った汽車は、ベルギーを離れた。
「神田!」
呼ぶ声に神田が大きく飛んだ。
界蟲一幻を放つその様子を見ていたユキサがふぅと息を吐く。
デンマークに任務に来ていた2人は、AKUMAと対峙していた。
コロコロとイノセンスがその場に転がる。
神田が広い、ユキサと共に踵を返した時だった。
"ハハハハ…!どんなにあがこうト、お前たちに未来はナイ”
どういう意味だと神田が振り返ったが、聞こえてきたのは不気味な声。
千年伯爵の声だった。
『時は満ちタ。7000年の序章は終わリ、ついに戯曲が流れ出ス』
神田とユキサが大きな月を見上げた。
千年伯爵の影が写る。
『開幕ベルを聞き逃すナ。役者は貴様らダ、エクソシスト』
ドオォン!と爆発音が聞こえ、ユキサがそちらを見るといつの間にかAKUMAに止めを刺した神田の姿。
「…これからが本番ってわけか。ふざけやがって」
「……」
「…どうした」
ユキサは何でもないと答えたが、胸に置いてある手が小さく震えていた。