第8章 第七話 終末への幕明け
「敵のスマッシュとか、カウンターでバシバシ返しちゃって…」
「彩音、もうそれくらいで…」
「カウンター…。そういえば、不二の戦闘スタイルがそんな感じでしたよね」
ふと、アレンが思い出すように言った。
最近はアレンとも鍛錬を行うようになった不二。
自分の戦闘スタイルが攻めに行くのが得意ではないと分かってから、不二はテニスと同じようなスタイルを取るように練習を始めた。
結果、やはり動きやすいと感じた不二は、敵の攻撃をかわしながら反撃をする戦闘スタイルで定着したのだ。
「僕は体を鍛えても筋力があまりつかないのもあるし…戦いやすかったんだ」
「いいと思いますよ!僕や神田やラビ、クロウリー、リナリーやユキサも前に出ることが多いですし、突っ込まない戦い方もあった方がいいと思います」
ユキサは遠距離もありますが、と付け足しながらアレンが言った。
不二がゆっくりと頷いた所で、汽車が目的地へと到着した。
「この町…ですか?」
「はい、ここです。イノセンスが見つかったはずなのですが…」
空は暗くなっていた。
辺りもしん…と静まり返っている。
話を聞こうにも、家の中にいる人たちは何かに怯えるようにして息を潜めていた。
その様子にアレンが少し焦ったように言う。
「ティエリーさん。今すぐイエーガー元帥に連絡を」
近くにいれば無線ゴーレムで連絡がとれるはず。
先程の人々の反応は、明らかにAKUMAがいるという事実を物語っていた。
アレンにティエリーが首を振った。
「元帥は今、無線ゴーレムを持っていません。壊れてしまったんです。…それをあなたが持ってきてくれたわけではないのですか?」
「え?」
アレンがコムイから預かったカバンを開ける。
そこには新品のゴーレムが置かれていた。
あはは…と曖昧に笑ったアレンに、彩音が不思議そうに首を傾げた。
「アレン、慌ててるみたいだけど、どうかしたの?」
「…。町の人のあの様子…AKUMAが現れたんだと思う」
イノセンスを狙って、AKUMAがこの町にやってきた。
イエーガーとの連絡が取れない今、どうするか…。