第8章 第七話 終末への幕明け
「ふわぁ~…」
「おはよう、彩音」
次の日、大きな欠伸をしながら歩いている彩音に声をかけてきたのは不二だ。
おはようと返すと、2人で並んで食堂へ向かう。
途中、ユキサとばったり会った。
「あ…お、おはようユキサ!」
「おはよう」
普段通りのユキサ。
彩音はちら、と不二に視線を向けて少し困ったような表情をする。
苦笑いをした不二がユキサに声をかけた。
「神田と仲直りは出来たの?」
「ちょ、周助!?」
そんな直球!?と驚く彩音をよそに、ユキサはうんと返事を返す。
「え!?本当に!?」
「うん。…まぁ、喧嘩していたわけではないんだけど」
それならよかったと喜ぶ彩音に、ユキサも嬉しそうに笑った。
3人が食堂へ着くと、何やら痛いほどの視線を受けた。
向けられているのはユキサだ。
「なんなの?」
「いや、多分昨日の…」
疑問を浮かべるユキサに酒に酔って脱ごうとした事を説明すると、そういえばそんな事があったようなと思い出す。
しかしユキサが覚えているのは神田の部屋での事だ。
食堂にいた時の事はうっすらとしか記憶がなかった。
「それにその後神田が」
神田?とユキサが彩音に聞いた所で、またざわっと周囲が騒いだ。
噂をすればなんとやらだ。
食堂の入り口に神田が立っていたのだ。
神田が軽く辺りを見回した所で、ユキサたちと目が合う。
「コムイが呼んでる」
そう一言だけ言って去っていく神田を追って、3人は朝ご飯にありつけないまま食堂を出た。