第7章 第六話 千年の剣士
「なっ…傷が…」
「イノセンスの力…!?」
驚く不二と彩音の横を、バッと風が吹いた。
傷の塞がったビットリオが、立ち尽くす神田へ大剣を振り下ろすその瞬間。
神田の前へ飛び出したユキサがシールドで大剣を受け止める。
しかしシールドは受け止め切れず、無情にも破壊された。
「ユキサ!!!」
大剣はそのままユキサの体へ振り下ろされた。
血飛沫が舞う。
崩れ落ちるユキサの体を抱え、神田は一度下がった。
慌てて駆け寄ってくる彩音にユキサを任せようとした時、神田の横を不二が走り去った。
「周助!?」
「おい!」
2人の制する声は、不二には届いていない。
グングニルを振り上げる。
ガキィン!と槍と剣がぶつかりあった。
「む…次は貴様か!?」
「そうだね、少し…」
相手をしてもらうよと不二が剣を流し、ビットリオの脇を突く。
槍が脇を掠ったが、ビットリオは気にせず流された勢いのまま、横に剣を振った。
それを不二が飛んでかわす。
大剣の重みを物ともせず、ビットリオが再び剣を振り下ろした時、不二はまたその攻撃を流し、ビットリオを斬り付けていった。
「あいつ…あの戦い方…」
「だめ、血が止まらない…!」
呆然と不二を見つめる神田の横で焦りを滲んだ声が聞こえて神田が我に返る。
今はユキサをどうにかしなければ。
「(…飲ませるか?)」
だがここでそれをしたら―――――。
いや、考えている暇はない。
自らの手首を口元へ運んだその時だった。
ぴくりと、ユキサの瞼が震える。
「あ……。神田…?」
目が合ったユキサが神田へふわりと微笑んだ。
怪我は…?と聞いてくるユキサに、彩音が涙を含んだ声で怒鳴る。