第1章 プロローグ 導かれし三人
特に幼馴染みの家族は酷いものだった。
見ていられないほど憔悴しきっており、酷い時は病棟に入るほどだった。
今ではだいぶ落ち着いてきており、静かに生活をしている。
「僕たちは…[ ]の分まで生きるよ。君が見られなかった未来を…」
彩音を抱きしめながら、不二はそっと目を閉じた。
「ご、ごめんね周助…」
少し照れくさそうに謝罪の言葉を述べる彩音。
帰り道、やっと落ち着いた彩音は我に返って赤面する。
ニコリ、と微笑む不二に彩音もつられて微笑んだ。
2人は恋人同士ではなかった。
いつも一緒におり、互いが互いをとても大事に思ってはいるが、関係には至っていない。
それは今は亡き幼馴染みの存在が2人の心に引っかかっているのだろう。
丘から街へ帰ってきた2人は、そのままショッピングモールへ。
例の事件があった場所だ。
3人でよく行っていたアクセサリーショップへ足へ運ぶ。
「珍しいね、周助がアクセサリーを買いたいなんて」
彼女?と冗談っぽく問いかけながら、内心、彩音は焦っていた。
もしかしたら本当に彼女が出来たのではないか。
学園内ではかなり人気があった不二。
自分の知らぬ間にもしかしたら恋人が出来たのかもしれない。
自分は踏み出せない一歩を、不二は歩み出したのかもしれない。
「フフ、彼女なんていないよ。僕には手のかかる泣き虫な子がいるからね」
「ちょっと!私泣き虫じゃないよ!」
「あれ?僕は彩音だなんて一言も言ってないよ」
クスクスと笑う不二に、あ!と彩音は慌てて口を押さえたが後の祭り。
もー…と照れながら頬を膨らませる彩音を、不二は愛おしそうに見つめていた。
「卒業祝い」
ふと呟いた不二に、え?と彩音は首を傾げた。
「何か彩音にプレゼントしたくてね。これなんかどうかな?」
そう言ってピンク色の小さな宝石がついたブレスレットを手に取る。
そしてそっと彩音の手首に巻き付けた。
「うん、似合うね」
「あ、え、えっと…じゃ、じゃぁ!私も周助に!!」
優しい笑顔を向けられて一気に顔が熱くなった彩音は、ごまかすように目の前のブレスレットを取った。