第4章 曖昧な関係は終着へ
独歩の瞳が不安そうに揺れる。
何に怖がっているんだろう。
「私達の関係はさ、正しいものじゃない」
「っ……嫌だっ! やめてくれっ! 聞きたくないっ!」
目を閉じて、両手で耳を塞ぐ。私は独歩の足元に跪いて、独歩の両手を耳から話す。
「独歩、聞いて」
「嫌だっ! 俺はっ、お前を手放すなんて出来なっ……」
早口で捲し立てるように話す独歩の唇を、自らの唇で塞いで言葉を止めた。
唇が離れると、口をポカンと開けて驚きに固まっている。
「ぷっ……何て顔してんのよ……」
「な、んで……」
笑う私を見ながら、相変わらず驚いた顔をしている。
「独歩は、私の事好き?」
「……好きっ、好きだっ! でも、俺なんかがっ……」
「私が好きな人を“なんか”なんて言わないで」
諭す様に独歩に言うと、隈の酷い目がまた見開かれる。
「え、好きって、あの、え?」
「いくら何でも好意がない相手構うとか、ましてや体許しつづけるとか、よっぽどの事がない限りないでしょ。私そこまでお人好しでもないし、ビッチでもないんだけど?」
ずっと戸惑いに揺れる目が、私を見る。
「独歩、好きだよ。私を、彼女にしてくれる?」
「俺っ、の彼氏になりたい」
「うん、何か順番むちゃくちゃだけど、よろしくね」
そう言った私に、独歩が凄く嬉しそうに笑うから、私もつられて笑う。
「あ……でも、お前は、本当に俺なんかで……」
「またなんかって言った。次言ったら口聞かないからね」
「だってさっ、お前は美人だし優しいし気配り出来るしいい女だから、他にもいいとこがいっぱいで……それに比べて俺はお前に好きになってもらえるような男じゃない……」
またネガティブな空気が彼を覆い尽くし始めたから、とりあえず向かい合うように膝に跨った。
予想外だったからか、目を見開いて私を見る。
「なっ、何やってんだよっ……」
「独歩は私をちょっと贔屓目で見過ぎね。私もそこまでいい女でもないよ。それに、独歩にだってちゃんといい所がたくさんあるんだよ。じゃなきゃ、一二三さんだって長く一緒にいないだろうし、私も好きにならない」
独歩の首に腕を回し、耳元に唇を持って行く。
「ほら、少しでいいから、自信持って?」
額、頬へとキスをする。