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記憶が亡くなる前に

第2章 宝箱の中の子


男は誰も来てないことを確認すると女の子に話しかけた。

「君…名前は?」

「………シオン」

「そうか、シオン
なんでここに?」

「……この海賊の1人だから…。」

「え…」

「あなたは新しい人?
ダメだよ…こんなことしちゃ。船長さんに見つかったら怒られる。
殺されちゃう。私は大丈夫だから…
私が悪かったの。船長さんの誘いを断ったから」

「船長の誘い?」

シオンは虚ろ気味で目の焦点が合ってないような気がした。
喋り方もどこかここに在らずな口調であり、年頃の子どもらしさが見受けられなかった。

「えっと…裸になって…一緒の布団に入って…」

それだけで男は悟った。

(そういうことか…)

「もういい、喋らなくて。辛かったな…
シオン、俺の知り合いに頼んで家に帰れるようにするから。もう安心だ。」

シオンはキョトンとした。

「おうち…ないよ。私5歳の時にオークションていうものに出されたもん。」

男は絶句した。
こんな子どもをオークションに…
怒りが込み上げそうになったが、落ち着いて話す。

「じゃあ、知り合いに君を…」

シオンはぎゅっと彼の腕を掴み首を横に振った。

「ここから出たら船長さん怒る…
もっと痛いことする。痛いのはいや。」

小さな体が大きく震えた。
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