第7章 一緒に
唯を迎えにでも行こうかーー。
棘が無意識に校舎の方向を見ると、そんな棘を見上げていた真希が立ち上がる。
「なぁ、棘。お前甘いもの好きだろ」
「……?すじこ…」
脈略無く言われた言葉に眉を顰める。
甘いものは嫌いではないけれど、別段好きな訳でもない。
立ち上がった真希は、側にあった木陰に置かれたスポーツバッグに歩み寄る。バックから財布を取り出すと、小さな紙を2枚取り出して棘に渡した。白地に青の、少し見覚えのある紙。
棘は素直にそれを受け取った。
「…………?」
受け取った紙はおそらく何かのクーポン券。でも意味を理解出来なくてしばらく手にした紙を眺めていた。
…………?
見覚えがあった気がして首を捻る。
「知らねぇ?駅前のクレープ屋だよ。補助監督の人がくれたんだ。期限もうすぐだろ?」
…………??
朧げな記憶を辿る。
駅前、クレープ、白地に青の印字……。
「………高菜!」
ワンテンポ遅れてやっとピンと来た。
見覚えがあったのは駅で見かけた大きなクレープの看板だった。唯や野薔薇がよく行くと話していた気がしたが、棘はまだ行った事がない。