第5章 痕跡を
今日は1年も任務がないと聞いている。
元々姉妹校交流会から手の空いているメンバーで一緒に昼練や夕練をするのが習慣になっていたりもするけれど。
唯は鞄を開き、スマホを探す。
手を伸ばし、…ふと、鞄の中に入れた抑制剤の紙袋を見ると、やはり少し胸が痛かった。
唯は首元に手をやる。ふわりと触れた指先には、硬いチョーカーがあった。
一見すると普通のオシャレなアクセサリーに見えなくもない。
あれから1ヶ月近く経つが、頸の噛跡…番である事の痕跡を、唯は未だに見る事が出来ないでいる。
ーーその現実を、目にしたくはなかった。