第5章 痕跡を
家入に呼ばれて医務室を訪れたのは、それから1ヶ月も経たない頃だった。
手渡されたのは見覚えの無い抑制剤が4日分。
それから、更に違う種類の抑制剤が4日分用意されていたが、そちらは誤飲を避けて一旦家入の預かりとなった。
どちらも発情〈ヒート〉中普段唯が呑んでいた抑制剤とほとんど同じだが、少しずつ成分が違うものだと言う。
詳しく話してくれたけれど、イマイチ理解出来なかった。
とりあえずはまず、手渡された抑制剤と元々の抑制剤で次の発情期〈ヒート〉は様子を見る事になった。
「ありがとうございます」
抑揚のない声で唯は礼を言うと、家入はただ頷いた。
「その後、体調は問題なさそうで良かった。任務も通常通り熟していると聞いている」
「はい」
家入にとってこの診察は勿論仕事のひとつ。
医師として、ファイルを見ながら淡々と告げて唯の体調を把握していく。