第4章 同級生
「おはよう、棘くんっ」
発情期〈ヒート〉が終わり翌日は念の為一日休んで、唯は復学する事になった。
約1週間ぶりの教室。
まだ少しだけ眠そうな棘に声を掛ける。
首元は頸の噛み跡を隠すように新たなチョーカーを買って着けた。暗証番号は、唯しか知らない。
ドキドキと胸が煩く鳴っていた。
少しだけ緊張したけれど、振り返って唯を見た棘は普段と変わらない同級生の顔だった。
「明太子〜」
変わらない、日常の風景。
真希の言う通り、棘は学校帰りや任務終わりに何かと言っては顔を出してくれた。
そしてすぐに、唯を避けるように帰って行く。
発情期〈ヒート〉中のΩのフェロモンはαを誘う。
けれど、番となったΩのフェロモンは、番以外のαを誘えなくなる。同時に、番以外のαのフェロモンは、Ωにとってはただ不快で、苦痛となるだけだった。
それはつまり、番以外のαと関係が持てなくなると言う事。
番は身体と心の関係ーー。
αである棘は、発情期〈ヒート〉がまだ終わらない唯を、気に掛けてくれたのだろうか。
…棘を、拒絶してしまった唯の事を。