第1章 好きだった
名前を呼ばれて唯は振り返る。
あまり聞き慣れない声だった。けれど、記憶の中に微かに残る男性の声。
「久しぶりだね、唯ちゃん」
そう言って笑ったその人は、何度か任務で一緒になった事のある三須先輩だった。
昨年、唯が1年生の時に4年生だった先輩で、今はもう学校を卒業して、フリーの呪術師として活動している。
「お久しぶりです、三須先輩。任務ですか?」
「うん。忙しくて困っちゃうね」
人好きのする笑顔で笑う三須は、その手を唯に伸ばした。
「ねぇ、今から私に付き合ってくれないかな?」
「……?でも、授業が、
言った唯の言葉は途中で途切れた。
ふわふわとした感覚に、瞼が重くなる。
真っ暗になるーー。