第1章 1
わたしの不安を見透かしたようにそんなことを言って優しく微笑む。
そっと握られた手は温かく、ほっと安堵の思いでわたしも桜を見上げた。
春色のそよ風が私たちを包み込む。
我ながら単純だと思うけど、わたしの不安はひろくんの笑顔一つでこのキレイに澄み渡った空のように消え去っていた。
もう、後戻りはできない、前に進むしかない。
決意を胸に隣の愛おしいその人を見上げる。
「大丈夫、俺がずっとそばにいるから。」
わたしをそっと抱き寄せて、まるで幼子をあやすように頭を撫でる。
「うん・・・いつまでも落ち込んでなんていられない。前に進まなきゃ。・・・紘くん・・・・ありがとう。」
「・・・ん〜?何が?」
「色々と・・・全部?」
「ん」
手を繋いで、桜のトンネルの下を帰る。
紘くんがいてくれるなら、何も怖いことはない。
何も。
怖くなんてない。