第1章 1
道路脇のライトがぼんやりと桜のピンク色を浮き上がらせ、その隙間からは真っ暗な空と絶え間なく瞬星が見え隠れして、さわさわと優しく風に揺れる小さなピンク色の花たちはわたしを励ましてでもいるかのようで。
わたしはゆっくりとその下を歩いた。
「キレイ・・・・」
足を止めてゆっくりと夜風を吸い込んで呟いた。
ひろくんと・・・・一緒に見たかったな、この桜。
今度一緒に来ようかな。
でも・・・・桜の寿命は短い。
桜が散る前に会えるかな・・・。
忙しい紘くんに・・・会えるかな・・・。
このままじゃ嫌だと一念発起して行動を起こした。
でも本当は不安でたまらない。
これから模索していく新しい未来。
本当にやっていけるのだろうか。
やっぱり、母や友達がみんな口を揃えて言う通り、無謀なことをしている気がして、怖くてたまらない。
1400万人もいると言うこのコンクリートジャングルの中、わたしはいつでもひとりぼっちのような気がして不安が募る。
不意に涙があるれ出しそうになる。
強い孤独感がわたしを包み込んだ。
「紘くん・・・っ」
思わず愛しい彼の名前をつぶやいた。
「呼んだ?」
背後で聞こえた世界一大好きな声。
びっくりして振り返ったわたしの瞳に、満開の桜の下で微笑む紘くんの姿が映った。
「紘・・・くん・・・?」
「仕事、今日が最後だったんだよね?・・・凹んでるんじゃないかと思って・・・これから行くところだったんだよね。・・・・桜、満開だね」
佇むわたしに歩み寄り、ピンク一色の頭上を見上げる。
「紘・・・くん」
「・・・大丈夫、なら、大丈夫だから、ね?」