第1章 氷の女
彼女と会うのは何度目だったか、宇髄は考えてみる。鬼殺隊の中では少数派の女隊士。切れ長の青い瞳をした、見た目だけは美女だ。しかし、にこり、ともしない。そもそも他人と話しているのすら見た記憶がない。
「おい。」
合同任務に彼女もいた。宇髄は彼女を呼び止めてみた。
「、、、私でしょうか?」
周りに他の人がいないのを確認した後で、彼女は口を開いた。落ち着いた、少し低めの声だった。
「お前以外に誰がいる。お前、名前は?」
「、、、氷見玲華と申します。」
名前まで冷たそうだ、と余計な事を考える。
「、、、何か御用でしょうか?」
「いや、別に。ただ名前くらい覚えてやろうと思ってな。」
「、、、では、失礼します。」
氷見玲華と名乗った彼女は、一礼すると、その場を後にした。あまりにも呆気なく、宇髄は声をかけたのを後悔すらした。
しかし宇髄は彼女が気になっていた。彼女の音は普通じゃない。無機質的で、なんとなく、氷が割れる時の様な音がする。
宇髄は考える。鬼殺隊に入るなら、それなりに辛い過去があるのだろう。そのせいで心を閉ざしてるのかもしれない。本当の彼女は違う音がするのだろうか。それを聞いてみたいと、宇髄は思った。