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首輪をつける

第7章 後始末


「おーい、貧乏人ー」

カルファが古びた戸を乱暴に叩く。

寝起きで乱れた髪を手でぐしぐしと撫で付けながら、に何度も呼びかける。

「喉が乾いた、目覚めの茶を淹れろ」

扉を拳でドンッと叩く。

「キャットニップティーだよ、早くしろー」

腹いせに鋭い爪を立て、傷をつける。

ガリガリと引っ掻きながら、

「お前のじゃねーとダメなんだよ、さっさと起きろ」

反応のない部屋に声を荒くする。

「おい、貧乏人?貧民貧民大貧民ー」

ついにイラついた表情すら解き、

「…………」

こめかみをピキっと脈打たせた。

「無視してんじゃねえよ」

我慢の限界を迎えたカルファは思いっ切り目の前のドアを蹴り飛ばす。

木製の古いドアが軋み、鍵が外れたと同時に、憮然とした顔でドアノブを捻る。

ドアを開くと青臭い臭いが鼻をついた。

「うッ!」

鼻を手で押さえ、辺りを見渡す。

「なんだこの臭い……くっせぇ……」

ベッドの方に視線をやると、深く絡み合う男女が目に止まった。

今にも意識を手放しそうなと、興奮冷めやらぬ様の裸の男。

と絡み合う男の下半身は人間の身体と大きく異なった形状で、離れる様子はない。

カルファは状況を把握し、小さく舌打ちする。

「……襲われたか」

臆することなく部屋の中を進むと、ベッドの前で足を止める。

汗と涙で濡れたの顔を持ち上げ、覗き込んだ。

「大丈夫か?」

「…………」

の反応が無いと見るや、ぐったりとベッドに倒れ込んだの頭をつま先でつつく。

は恨めしそうに顔を上げた。

「お、生きてる」

「生きてるに決まってるでしょう、が……」

はカルファを見据え、眼光を鋭くする。

カルファはふーんと適当に相槌を打ち、交合の真っ最中の男を見つめる。

透けるような白い肌と髪、真っ赤な瞳。

進化の過程で脚を捨てた、細長く伸びる下肢。

上半身は人間の美青年ながら、彼の身体は蛇そのものだった。
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