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首輪をつける

第16章 二匹の獣


ヴィークは眼前でなされる会話に顔を顰め、サピルーンと言い争うカルファの前に一歩進み出る。

「……もちろんタダでとは言いません。様の連絡先を教えて頂けるのであれば」

傍らからアタッシュケースを取り出し、カルファに差し出した。

「此方を差し上げます」

カルファは訝しげにアルドとヴィークを見る。

そろそろと受け取りアタッシュケースを開くと、中にはビッシリと札束が詰まっていた。

カルファは目を見開き、口元を引き攣らせる。

「……マジかよ。あいつに会うためだけに……」

「ええ。この事はくれぐれもご内密にお願い致します」

ヴィークはカルファの横に立ち、アルドから金に目が無いと聞いていた近縁種の彼を冷めた目で見下ろす。

「はー……すっげえ……」

カルファは机に顎を乗せて札束を眺め、その中から一つ取り出す。

一枚札を抜き出して、目の前で透かすように見つめたり、尻尾を揺らして考え込んだりしながら、札束を机に置いた。

「……そもそもなあ、俺は俺なりにアイツのこと気に入ってんだよ。この金は喉から手が出る程欲しいけどよ」

アルド達を見据え、にやりと口角を上げる。

「金貰うより、強い王様が、かっこいい従者様が小娘相手に振り回されて、一介のボンボンにへりくだってんの見る方が俺にとって価値があんだよ。最高の娯楽だ。だから断る」

「虫唾が走る考えですね」

「だからサピルーンお前なあ! さっきからどっちの味方なんだよ!」

「様の味方です」
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