第3章 -3-
「まさき先輩?」
あ、やばい、またボォっとしてた!
料理を注文して、その直後、申し訳なさそうにトイレへと立った紘を笑顔で見送って、また思い出に浸っていた。
「あ、ごめん、いろいろ思い出しちゃうんだよぉ〜、紘に会ったせいで」
「今度は何思い出してたの?」
紘がちょっと呆れたように優しい苦笑いを浮かべながら私を見る。
「んふふふ・・・・紘が告白してくれた日のこと思い出してたよ」
「は!?・・・・最悪、なんで覚えてんの?」
「覚えてるに決まってるでしょ?紘は?忘れちゃったの?」
「忘れてないけどっ・・・はっず・・・・」
赤くなった顔を隠したいのか、両手で顔を覆う。
「・・・・耳真っ赤だよ」
「うるさいなぁ!」
「ほんっとに、変わってないね、紘。高校生の時から成長してないの?」
「なんでだよ!?成長してるよ!・・・・まさき先輩といるとなんか・・・調子狂う!」
紘が拗ねたような声を上げた。
「・・・・知ってるよ、見てたから。」
「え?」
私の言葉に、紘が怪訝そうな顔になる
「ずっと見てたよ。高校の後輩にデビューのこと聞いて以来ずっと、見てたよ。・・・頑張ったね、紘。すごいね。」
何秒間かじっと私を見つめた後。
「はぁ・・・・」
紘が大きく息を吐いてまた両手で顔を覆ってしまった。
そのままピクリとも動かない。
「紘?」
心配になって声をかけた私に、紘が顔を覆ったまま話し始める。
「・・・・ずるいよ、先輩。そーゆーこと急に言わないでよ。ただでさえ・・・40すぎて涙腺緩んでるのに・・・・今ちょっと仕事で悩んでることあったからさ・・・そーゆーこと言ってもらえると・・・ちょっとマジでやばい。」
声が震えないように努力してるのか、そこはさすが声優と言うべきか、顔を両手で覆っていても普通に声が通る。