第10章 へたれ男《コビー》
「リンさんって本当に素敵な人ですよね」
『…そりゃどーも』
ある日コビーくんからそんなこと言われた。
普段言わないコビーくんはへへっと頬を人差し指でかきながらも真っ直ぐと私を見て言った。
私は特に反応せず額にできた傷に絆創膏を貼る。
今日もこの子は性格の悪い先輩にボコボコにされていた。
「いてて…」
『我慢しなさいよ』
私が気がついた時にはもう本人たちはおらずにコビーくんが廊下の真ん中で倒れているだけだった。
誰がやったのか聞いても彼は答えてくれない。そういう変に人を庇うところが嫌いなところの1つでもある。
『やり返せばいいのに』
「…あのような人たちと同じ土台にたっては正義は語れませんよ」
…確かに。