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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第11章 【五条/シリアス】最愛のあなたへ



「……ゆめ、気分はどう?」


白いカーテンが開いて、家入さんが顔を出す。


「最悪。私、何日寝てました?」

「んー、ざっと10日間。だんだん寝てる時間が長くなってきてるな。水、持ってくるから」


彼女が部屋を出ていく音を聞きながら、深くひと呼吸する。

最愛の人が死んだあの日、すべてを拒んで世界を呪った。悟から私へ贈られた指輪は、今は亡き術師が作成した特殊なものだったようで、私の強力な負の感情に呼応し、まさかの呪物と成り果てた。

元は私の呪力を感知して身を守るハズの呪具だったようで、解呪しようにも、全て終わる頃には数十年かかる。私の方が先に御陀仏になると知って潔く諦めた。


一人で生きるには余りにも辛すぎる。

だから、己の命を削りながら幸せな夢を見続け、だんだんと朽ちる呪いに身を沈める。

家入さんは「お前ら二人、愛が重いんだよ」と呆れた様子だったけれど、最期まで私に付き合ってくれるらしい。

着実に脈が弱くなってきていることを自覚する。


私が永遠の眠りにつくのは近そうだ。いくら待っても眠り姫を目覚めさせる王子様は訪れないのだから、どうなっても構わない。


「ああ……早く、会いたいなぁ」


そう呟きながら、私は乾いた笑いを浮かべる。私の願いは、誰に聞かれる事なく虚空へと消えた。






END.
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