第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
「僕、ゆめちゃんの子供の頃を知らないから、昨日は見ることが出来てすごく嬉しかったんだ」
正直にそう告げると、ゆめちゃんは恥ずかしそうに目を伏せて、「実はね」と呟いた。
「本当はもっと早く本当の気持ちを伝えたかったんだけど、昨日の動画見せられたら恥ずかしすぎて言い出せなくて。昨日のことも覚えてないし、迷惑かけちゃったかもしれないと思ったら怖くて……」
最後の方は小さく消え入りそうな声で話すゆめちゃんは、しゅんとした表情で項垂れていた。
僕も本音を伝えたくて、彼女の方に体を向けるように座り直す。
「ゆめちゃんと同じ気持ちだよ。僕も好きなゆめちゃんとずっと一緒にいたい」
僕の言葉に、目を見開いたゆめちゃんの顔が赤く染まっていく。照れているのか、繋いだ手にギュッと力が込められた。
えへっ、と僕が笑うと、彼女も赤くなった頬のままで微笑んでくれる。
「今日はゆめちゃんと一緒に夜の御飯食べたいな」
「……ふふっ、オムライスでいい?」
「うん、フワフワ卵にして、ケチャップかけて食べようか」
それから二人で他愛のないことを喋りながら、穏やかな時間を過ごす。
笑う彼女の横顔を見ながら、もし結婚して子供が出来たら、昨日のリトルゆめちゃんみたいな女の子が生まれるのかなと考えて、一人可笑しくなった。
真希さんが昨日の動画をうっかり五条先生に見せてしまい、「乙骨先輩がロリコンだって五条先生が言いふらしてます」と一年の伏黒くんに言われ、パンダくんと狗巻くんは爆笑する始末。
結局、僕は皆にからかわれる運命らしい。
でも、こんな平和な日常も悪くないかなと、密かに思った。
END.