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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第7章 【五条/シリアス】哀情-Answer-(五条視点)



【五条視点】


後悔先に立たず、とはよく言ったものだ。

今までの人生で、僕は3回後悔をしたことがある。

1度目は親友の苦しみに気づけなかったこと。

2度目は命を奪うことでしかアイツを止められなかったこと。

3度目は周りの皆と愛するゆめに、心の底から心配をかけてしまったこと。

傑が非術師を大勢手に掛けて一つの集落を地図から消し去り、実の両親をも殺し、高専から離反した2007年9月のあの日。

当時、担任の夜蛾さんから事件を聞いた時、「なぜ?」が頭の中をずっとぐるぐる巡っていて、きっと傑と直接会えば、アイツと直接話し合えば、何かが、最悪の結末が、変わると信じていた。


「もし私が君になれるのなら――」


傑はそう言ったが、オマエにだって理想を成し得るだけの実力があったはずだ。なぜ自分にはその力が無いと思ったんだ。

いつだか、傑は後輩たちに指導していた。


「どうせ自分には救えるだけの実力は無いと思考停止すれば、眼の前の1人だって救えなくなる。最期の瞬間まで、呪術師であることを忘れるな」


いつだって、呪術師は社会の平穏を守るために全力を尽くすべきだと七海や灰原に言ってただろう。

その教えを守り、灰原は儚くも散ってしまったが、七海は今も傑の言葉を胸に刻んでいる。


最強だのなんだの持て囃されても、六眼(こいつ)があっても、無下限呪術があっても、僕にとって一番救いたい眼の前の1人の奴を救えなかったというのに。

自分から手を振り払って去っていくなんて、本当に馬鹿な奴だ。


本当に馬鹿なんだよ、オマエは。


高専を卒業しても、暗闇の中で去っていく親友の背を追いかけて、追いつけなくて、名前を叫んだところでハッと起きる。

そんな夢を見る夜が続いていた。いつの間にか、睡眠時間は短くても生活出来るように体が慣れてしまった。

もう吹っ切ったと思っていたのに。

もう、若い世代の呪術師を上の連中どもの駒のように使わせはしないし、消耗品のような扱いはさせない。そう、意気込んでいた。

五条家の当主を襲名し、高専では教職に就くことを選んだ。

心の何処かでは、いつか和解できると、理解し合えると思っていた。甘い考えを持っていたと認めざるを得ない。

呪術師の仲間を大切に想う心は繋がっていると思っていたから。


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