第4章 【五条/ヤンデレ】燐光
あの人の愛は猛毒だった。口にすれば窒息し、触れれば爛れる。少しずつ侵蝕していく悟の愛は重く、私を弱らせていった。
「ゆめ、どこに行っても僕の手のひらの上だ。逃げても迎えに行くよ」
夏空のような爽やかさを纏う瞳の色に見え隠れする、少し衝撃を与えれば飛び散る火花のような激しさ、狂おしさ、底知れない闇。
「僕だけを見てて、ゆめ。君が先に死んでも、綺麗に処理してドレスを着せて、僕が死ぬまで飾っておいてあげるから安心して」
夏油傑という親友を失ったあの時から、あの人は少しずつ、確実に見えない何かに浸食されていた。
大人になったんだと、周りはそう解釈していた。親しい人には子供のように振るまい、敵対するものにはどす黒い本性と強さを見せつけた。だんだんと変わりゆくあなたを、変われない私はじっとただただ見つめているしかなかった。
そして、私は夏油傑が好きだった。
傑と悟と、硝子と、灰原くんと七海くんと、その他みんなで過ごす時間が何にも変え難く、一番好きな時間だった。
もう私の恋は永遠に叶わない。全部どうでも良い、と、半ば自棄で自ら悟の腕の中へ足を踏み入れた。あの手を取ればもう戻れないと、この手を伸ばせば枷をはめられると知っていたのに。
私が寂しさから悟を求めた時、
「ゆめだけは、ずっと傍にいてくれ」
失いたくない、と貴男の涙を初めて見た。
親友を失った悟の心の痛みは私の比ではないだろうが、長年の付き合いもあって絆されてしまい、プロポーズを受け入れた。
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