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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第17章 【五条/婚約者ネタ】牡丹に唐獅子、波に兎



そして、我を忘れた。

私を裏切った家族を半殺しにし、周辺一帯を破壊し、大暴れした。

兄の部屋を粉砕。父の書斎を、母の茶室を、応接間を、全てを呪力で破壊した。


家族は逃げ惑い、使用人たちは悲鳴を上げた。


「お前たちが!お前たちが私を売ったんだ!娘を生贄にして、さぞかし甘い汁を吸ったんだろうなぁ!」


私は叫びながら、術式を発動し続けた。

庭の木々が根こそぎ吹き飛び、塀が崩れ、屋敷の一部が崩壊した。


やがて、五条悟が現れた。

彼は私の攻撃を全て無効化し、あっさりと私の術式を抑え込んだ。


「はいはい、一通り暴れたらスッキリした?良い子だから帰るよ」


その優しげな声が、何よりも腹立たしかった。

私は気を失うまで抵抗し続けた。


そして今——

嫁いだ五条家の屋敷での初めての夜。

寝室の布団に横になっても、眠れるはずがなかった。


襖の向こうから、五条悟の気配が感じられる。

彼は廊下で待っているのだろうか。

それとも隣の部屋に入ったのだろうか。

いや、どうでもいい。


私はもう一度、深く息を吸った。

明日から、この男との生活が始まる。

同じ屋根の下で暮らし、形だけでも夫婦として振る舞わなければならない。


なぜ、私なのか。


その問いが、また頭の中で響く。

五条悟には、もっと相応しい女性がいくらでもいたはずだ。美しく、教養があり、彼を愛してくれる女性が。


なぜ、私を選んだ。


なぜ、こんな手段を使ってまで——


考えても答えは出ない。


私は寝返りを打ち、枕に顔を埋めた。

そして、静かに涙を流した。

誰にも見られないように。誰にも聞かれないように。


ただ、悔しさと屈辱と、そして自分でも理解できない複雑な感情に押し潰されそうだ。




END.
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