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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第16章 【直哉/ if /17巻ネタ】反撃のルナール




「まどろっこしいのは嫌いだから早速聞くけどさ。右眼の視力も失い、半身に麻痺が残った男に執着するのはどーして?」


五条悟は、いつものように飄々とした口調で尋ねてきた。

言動が軽薄であろうと、他家の者に不遜な態度であろうと、彼は曲がりなりにも五条家当主だ。

私の選択は、さぞかし滑稽で非生産的だと思われている。

理解に苦しむ。細められた青い目は、雄弁にそう語っていた。


「彼に罵倒されるのが好きなの。五条家のご当主様には、私を満足させる戯れは出来ませんわ」


私は薄く笑って答えた。

応接間の窓から差し込む午後の光が、白磁の茶器に反射している。

完璧に整えられた高貴な庭園。

何一つ乱れのない、退屈な美しさだった。


「そ?意外とハマるかもよ?まぁ、正直なところ……五条家からの提案を蹴って、落ちぶれた禪院直哉を取るってのが分かんないよね」


澄んだ六眼が探るように私を見据える。

だが、すでに腹を括った女の心の奥底までは見えまい。


「殺気立った手負いの狐が好きなだけ……理由なんてそれだけで十分でしょう」


そうだ、私は禪院直哉の貪欲さに惚れたのだ。

他の男など、目に入らないほどに。

私が口端を上げて笑ってみせると、五条悟は鳩が豆鉄砲を食らったような表情を見せた後に、「おー怖い怖い」とわざとらしく肩を竦めていた。




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