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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第14章 【虎杖/コミュ提出物】ヘレボルス


一方、悠仁は廊下を全力で駆け抜け、階段を登り、ついに彼女の病室の前までやってきた。

迷いなく部屋の扉を開けた時、双眸を見開く。


「ゆめ……?」

「あ、悠仁。私のお姉ちゃんを紹介するね」


心底嬉しそうに笑い声を上げる少女の隣にいるもの。

それは、どう見ても人ではなかった。

幾度となく対峙してきた嫌悪する存在。人の負の思いから生まれ出る、その怪物。


「……ゆめ、ソレから離れろ」


大きい花のような姿を持つそれは、紛うことなき呪霊。

揺れている花弁に見えるそれは、人の手を模しているような形をしている。中心部には赤い口がついていて、嘲るように下品に笑った。

ゆめの目元と身体に絡みついている触手をもつバケモノを、彼女は姉と呼ぶ異様な光景だった。


「何言ってるの?私の家族だよ?」


ゆめは不思議そうに首を傾げる。そして、まるで愛しいものを見るように触手を撫でる。

ケタケタと耳障りな笑い声が、呪霊から漏れた。


「ア、ヒヒ…………プレゼ、ント……ヒヒッ」


もうこちらの声は届いていない。

悠仁は彼女に駆け寄ろうとしたが、その行く手を異形の触手が阻む。早く解決すべきだと術師として判断しつつも、攻撃を回避しながら距離を取った。

呪霊に触れられた彼女の目は、呪われたせいか濁っており、ただ眼前の異形だけを見つめている。


「……っ、ゆめの姉ちゃんは死んだんだよ!もういない!」

「違う。お姉ちゃんはここにいる!……だって……だって、星の女神様がプレゼントをくれたんだもん!」

「それは……そいつは、アンタが生んだ呪いだ!」


呼びかける必死な声にも、少女の心は微塵も揺るがない。




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