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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第14章 【虎杖/コミュ提出物】ヘレボルス



聖テオトコス病院には、冥界に近い場所がある。

【星の女神様】に導かれて【黄泉がえりの木】にたどり着いた時、今は亡き人に会えるだろう。



「……以上が、ネットでまことしやかに囁かれる噂っス。3人の入院患者が突然行方不明。病院スタッフとして潜入している窓が今も調査を続けてはいますけど、収穫はゼロといったところっス」


吹きつける木枯らしで頬が痛くなるクリスマスイブの日。

呪術高専から派遣された虎杖悠仁と伏黒恵の2名は、手元の資料に目を通してから補助監督の新田明の方に視線を遣る。


「ちなみに、五条さんからは『都市伝説系は自分で体験してみると面白いよ〜』って、伝言あり。補助監督としては、くれぐれも安全第一でお願いしたいところっス」


陽気な五条悟の声が、各々の脳内で再生される。恵の眉間に、僅かに皺が寄った。

渋面で伝言を告げる明に、悠仁は肩をすくめてみせた。

自分も祖父を亡くしてはいるが、そんな都市伝説を試してみてまでは会いたくはない。もしかしたら、そこにいるのは呪霊かもしれないのだから。


「伏黒はどう思う?死人が生き返るワケないとは思うけどさ」

「どうもこうも、十中八九、呪い絡みの案件だろ。都市伝説系は、興味を持つ人間が多くなるほど呪いも強くなる。土壌は病院。それに……」


そう言いかけ、恵の指がタブレットの上を走る。関係者数人の資料にさっと目を通し、顔を上げた。


「先月末、この近くで雑居ビルが突然倒壊し、何人もの死傷者が出た事件があった。今回の行方不明者は――」


明が黙って神妙な面持ちで頷くと、悠仁が資料を覗き込みながらハッと息を飲んだ。

そう、行方不明者は全員、その事件で大切な人を亡くしていたのである。


聖テオトコス病院は都内にあり、件の倒壊したビルからも近い場所に位置している総合病院。

事件の怪我人のほとんどがこの病院に運ばれて処置を受け、現在も治療を継続している者もいる。

調査の依頼者である病院の院長から寄せられた情報によると、次の行方不明者になるのではないかと危惧されている人物が2名いるという。

両者とも未成年で、倒壊ビル事件で孤児となった。




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