第13章 【高専五条/お題】林檎の花が咲く頃に
「五条くんのことは……好きじゃない」
「へぇ?じゃあ嫌いなのか?」
「そうじゃないけど……」
「嫌いじゃないなら、好きってことだろ」
私が返答すると、五条くんが間髪入れずに断定してきた。
「……そう、なのか……な?」
「素直に認めた方が楽になるぞ」
まるで私を諭すような口調でそう言われて、私は少し悩んだ後、口を開く。
「え?あれ?うん……?」
私が返事をすると、したり顔をしている五条くんが一歩距離を詰めてきた。
「俺のこと好きなら好きって言えよ」
「はー、なんでそんなに自信満々なの?五条くんこそ、私のこと好きなんじゃないの?」
顔を上げた私は照れ隠しに冗談を言った――はずだった。
しかし彼は表情を変えず、じっとこちらを見つめる。
その視線に少し気まずくなって私は慌てて苦笑しながら口を開いた。
「な、なーんて!冗談だよ!五条くんモテそうだもんね!この間、他校の可愛い子から携帯番号聞かれてたって硝子が話してたし、私なんか……」
だんだん勢いが無くなって、言葉が尻すぼみになったところで、五条くんがフッと笑った。
それから私を真っ直ぐに見る。その迷いのない視線がくすぐったくて、私は思わず目を逸らした。
すると、逸らした視線を元に戻すかのように私の頬に再び手を当て、そのまま五条くんの方を向かせられた。
「好きに決まってんだろ」
五条くんはいつもみたいな憎らしげな笑みではなく、優しく微笑んで言った。
予想外の展開に頭が回らなくなって、私は何も言えない。私の火照った顔を、窓から入る風が撫でていく。
刹那、相手が視界から消えたと思ったら、耳にやわらかい感触が押し当てられる。
「赤くなると林檎みてぇだなって、今すぐ食いたくなるくらい美味そうに見えるのはゆめだけだ」
囁かれた言葉に反して、こちらの反応を窺いながらのぎこちない口付けが降ってきて、さすがに恋愛初心者の私は陥落した。
五条くんと居ると刺激が強すぎて、いつか早死しそうです。
END.