第13章 【高専五条/お題】林檎の花が咲く頃に
それは突然だった。
放課後、二人でくだらないことをダラダラ話していた。
不意に流れる数秒の沈黙。
隣から手が伸びてきて、私の頬をつまんだ。それに驚いて五条くんの顔を見上げると、彼は悪戯が成功したかのような笑みを浮かべていた。
「隙あり。任務だったら死んでたな」
「……き、急に触んないで」
慌ててその手を払い除けると、五条くんが含み笑いをもらす。突然、距離が近くなったようで、なんだか胸が高鳴る。
私はそれを隠すように顔を逸らした。
「ゆめの顔、赤くなってる」
「暑いから!」
「ふーん、まだ4月なのに?窓、開けてやろうか?」
窓の手すりに肘をついて私の顔を覗き込む五条くんは、とても楽しそうで、それでいて何かを企んでいるような表情をしていた。
ドキドキしていることを悟られないように顔を逸らし続けたけど、それでもやっぱり五条くんは私の顔を見ようとする。
「こっち向けよ」
「や、やだ」
「なんで?」
「だって、五条くん……なんか企んでる顔してる」
私が言うと、彼はククッと笑った。
「さすが。よく分かったな」
私の火照る頬を、大きな手が覆った。温かい。じわっと触れられた部分から熱が伝染する。
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