第12章 【ほのぼの甘】五条先生と夏油先生
逞しい腕で肩に担ぎ上げられたまま、二人の先生は校舎に向かって歩き出してしまう。
「ゆめ〜頑張れよ。骨は後で拾ってやるから」
「パンダ!ちょっと!笑ってないで助けて」
「おかか」
パンダと棘の二人は、まるで他人事のように私たちを見送る。
私は二人に助けを求めたが、二人ともニヤニヤしながら手を振ってくるだけだ。
「じゃあね〜みんな。今日の訓練はこれで終わり!ゆめとデートしてくるから、また後でね」
そう言って五条先生は私を抱えたまま廊下を進んでいく。
「ちょっと!先生!」
「こら、暴れない。お尻触っちゃうよ?」
堂々とセクハラ予告されて、抵抗を止めた。私の反抗も虚しく、先生たちはそのまま足を進めていく。
仮眠室と書かれた部屋の前で止まると、五条先生は器用にその部屋のドアノブを片手で回した。
「え……先生、ここって……」
「僕たちがいつも使ってる仮眠室だよ」
そう言いながら先生は部屋の中へ入っていく。そしてそのままベッドの前まで行くと、私をそっとベッドの上に下ろした。
「さてと……じゃ、試そっか」
ここぞとばかりに目隠しの布を外しながら、こちらを見下ろしてくる。
五条先生の瞳はいつも通り青くて綺麗だけど、どこか怪しく光っているように見えた。
「選ばせてあげる。どっちがいい?」
ベッドに腰掛けている私の目の前に、五条先生が立っている。その後ろには、相変わらず笑顔の夏油先生が腕を組んで立っていた。
「どっちが好きか、選んで」
「え……選ぶって……」
私は二人の顔を交互に見る。
どちらもニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべてはいるが、その瞳は笑っていない。
まるで獲物を狙う獣のような視線に射抜かれて、動けなくなる。
「ゆめが好きなのはどっち?もちろん僕だよね」
「私は悟みたいに強引に迫るようなことはしないけど、ゆめの口から私の名前が聞きたいな」
ああ、これは答えるまで帰らせてもらえそうにない。
ごくりと唾を飲むと、二人の顔を交互に見比べた。
「私が好きなのは……」
END.