第8章 呪霊の体液
辺りにはドレスを着て綺麗に着飾っている女性や、スーツを着た若い男性ばかりだ。その中を戸惑う事なく歩く全身黒尽くめの私達は、明らかに浮いた存在なのだろう。チラチラと周りの人達が見ているのが分かる。
まぁその中には傑のイケメンっぷりに惹かれている人もいるんだろうが。本当傑といい悟といい、私の同期は男前な顔立ちで目立って仕方がない。呪術師って目立っちゃダメなはずなのに。もはやこの二人は呪術師というよりは芸能人か何かになった方が良いのではないだろうか。
「悟とは上手くやっているのかい?」
そういえば悟と婚約してから、傑に会うのは初めてだということに気がつく。
「うん、仲良くやってるよ。悟も忙しいのになるべく家に帰って来てくれてる」
「それなら良かったよ、君達の仲の良さが世界の平和に繋がるからね」
「何それー」とクスクス笑う私に、傑はニコリと笑みを見せながら「本当だよ、君達がモメでもしたら悟のやつきっと日本どころか全世界を滅ぼすだろうね」なんて物騒な事を言い出すものだから私はケラケラと笑っていた声を止め「気を付けます…」と冷や汗を垂らしながら答えた。