第7章 寂しさ
ホテルを出てタクシーに乗り込むと、何とかギリギリのところで新幹線には間に合った。
座席に着き「やっぱり今日帰るよ」と悟に連絡をしようとしたところで手を止める。どうせならビックリさせよう。いきなり帰ったら悟はどんな顔をするかな。
そんな少しのイタズラ心に内心ワクワクしながら、取り出したスマホをポケットへと戻した。
自宅の最寄駅へと着くと、5分も歩けばあのやたらと高く高級なマンションが見えてくる。私は何の躊躇もなくすでに慣れた手つきでエントランスロックを開けると、エレベーターへと乗り込んだ。
部屋に着きドアノブを捻るものの、やはり玄関の鍵は空いていない。時刻は0時30分。悟は帰って来ているのか、それともまだ任務中かな。
鍵を鍵穴に差し込み玄関を開くと、家の中は真っ暗でまだ悟は帰宅していない事を告げている。
荷物を室内へと入れ脱衣所に向かうと、真っ黒な任務服を脱ぎ捨てて適当な部屋着に着替えた。
やっぱ任務後の長距離移動は結構疲れるなぁ。悟はそれでもいつも帰って来てくれてるんだ。そう思うと、なんだか少しだけ胸がぎゅっとするような、だけどどこか温かな気持ちが溢れてくるような…そんな気分になった。