第6章 僕の可愛い人
純愛とは「その人のためなら自分の命を犠牲にしてもかまわないというような愛」「肉体関係を伴わない愛」「見返りを求めない愛」などを言うらしい。
ならば、僕のこの想いは純愛なんかじゃない。
彼女の為に死ねる事は確かだ。何の迷いなくアイツのためなら一瞬にして死ぬことが出来るだろう。
だけど、肉体関係を求めない愛なんて無理だ。何故なら僕は彼女の事をもう随分と前から、ぐちゃぐちゃになるほど抱いてしまいたいと何度も夢見ているからだ。つーか好きな女抱かなくても良いとか思ってる奴いるの?それこそ仏だろう。なんて思う。
触れたい抱きしめたいキスをしたい。舌を突っ込んでとろけそうなほど口内を犯したい。ドロドロになるほど抱き合って、互いの境目が分からなくなるほど溶け合いたい。
君の乱れた姿が見たい。君の荒く甘い声が聞きたい。欲望にまみれた僕のこの感情は、決して純愛なんていう綺麗なモノでは収まりきらない。
見返りを求めない愛?そんなの無理だ。
僕を好きになって欲しい、僕だけだと言って欲しい。僕なしでは生きていけないようになれば良いのに。そんな事ばかりが頭を駆け巡っているのだ。
「そんな綺麗なモノじゃないよ。これは呪いだ、愛ほど歪んだ呪いはないよ」
そう、これは呪いなのだ。
僕がヒナへ向ける『愛』と言う名の『呪い』
目に見えるだけ、そこら辺にいる呪霊の方がいくらかマシかもしれない。そう小さく呟けば、傑はその切長な瞳を少しばかり見開くと「なるほど、呪いねぇ」と遠くを見つめるように小さく呟いた。