第6章 僕の可愛い人
まだ焦る必要はない。なんせこちらは20年も待ったんだから。
やっとここまでやってこれた。やっと僕を少しずつだが見てくれるようになった。だけど不思議なもので、近くなればなるほど今まで我慢できていたモノがタガが外れたみたいに…今すぐにでも僕を好きになってほしい。僕をもっと欲してほしい。そんな欲望が僕の心の中を埋め尽くしていく。
今すぐ任務先まで迎えに行って抱きしめたくなるような気持ちを抑え、もう一つ来ていたメッセージを開きある事を思い出す。
『着いたから先に入ってる』そんなシンプルな言葉に「あ、やべ。忘れるところだった」と呟きそのままスマホをポケットへとしまう。ヒナに会いたすぎて思わず忘れる所だった。
「伊地知、駅前で下ろして」
「駅前ですか?」
「うん、あと追加任務出そうだったら傑に連絡して。僕行きたくないから」
特級呪術師は日本に4人いる。そのうちの2人が僕と親友の夏油傑だ。つまり僕が受け持つ任務は傑が行う事も可能だということ。まぁ敵と術式の相性なんかもあるけど。大体の事は可能だ。
それは傑にも言える事で、傑が行うはずの任務は僕が行う事も可能性だということ。
伊地知に駅前で下ろしてもい、何度か来たことのある店のドアに手をかけるとそれをゆっくりと開ける。店内はそこまで広いというわけでもないが客はそれなりに入っている。
そこそこの値段がする為か、若者はおらず自分達と同じ年くらいの人間がちらほら。あとは一回りニ回りは年上の客が多いように思う。