第6章 僕の可愛い人
『任務完了!明日帰るね♪』とそんな短いメッセージだが、僕は高鳴る胸を抑えるのに必死だった。
同棲を初めてから3週間、1週間ほど前から出張に行っていたヒナがやっと明日帰ってくる。
「あー、早く会いたい」
そんな事を呟けば、やはりバックミラー越しに見える伊地知はビクリと肩を揺らし僕を怪しむように見つめていた。いやいや、僕のこと何だと思ってんだよ、あいつ。
1週間会えない事なんて今までだってザラにある。ヒナが長期の出張に行くことはあまりなくても、僕は月の半分以上は県外にいることが多い。
ヒナと一緒に住むようになってからというもの、今までなら泊まりで行っていた任務も、夜中になろうが無理矢理にでも家へ帰宅して彼女を抱きしめて眠るのが僕の日課であり癒しになっていたのは当然のことだ。
だからだろうか…ヒナのいないベッドはあまりに広く寂しく感じた。早く帰って来てくれと何度思ったか分からない。早く君を抱きしめたいと何度呟いたか分からない。我ながら女々しくて笑えるほどにそれは情けない姿だったように思う。
彼女からのメッセージに本当は、早く会いたい。早く抱きしめたい。早くキスしたい。ヒナがいなくて寂しかった。そんな次々と溢れ出てくる言葉を我慢して『お疲れ様!気を付けて帰ってきてね』とそんなありきたりなメッセージを送る。うん、無難だ。本当の気持ちなんか送ったらそれこそ重すぎて気持ち悪いだろう。