第6章 僕の可愛い人
「はあぁぁぁぁ、あんなくだらねえ話しする為に僕を呼び出すなっつーの。なぁ、伊地知?」
クソでかい溜息を吐き出しながらドカっと音を立て後部座席に座ると、長い足を放り出すようにして助手席の椅子を蹴り飛ばす。
「お疲れ様です…五条さん」
伊地知は少しばかり居心地の悪そうな表情を向けると、バックミラー越しに苦笑いをしながら僕を見つめた。
毎回毎回どうでも良い話を永遠に長々と。ジジイ諸共建物ごと破壊したい気持ちを抑えて黙って聞いてりゃぁくだらねぇ事ばかり抜かしやがって。
「腐ったみかん共の相手をしてられるほど、僕は暇じゃねぇっつんだよ」
イラ付いた気持ちのままブツブツと文句を吐き出せば、ポケットのスマホが音を上げている事に気がつく。もし追加任務だったら発狂してしてやる。なんて思いながら開いたメッセージは、僕が待ち望んでいた人物からのメッセージで、思わずぱぁっと顔が明るくなっていくのが自分でも分かった。
散々文句を言っていたはずなのにいきなり黙ったからだろうか。そんな僕に気がついた伊地知が、まるで奇妙な物を見るみたいな顔をしていたが今は気にしない。
何なら後でマジビンタでもしてやろう。