第6章 僕の可愛い人
その無垢な笑顔も。
僕を優しく「悟」と呼んでくれる声も。
頑張り屋で強がりなところも。
好きだ。
好きだ。
好きだ。
可愛い、もっと一緒にいたい、抱きしめたい
そんな僕の感情を伝えたら、君は一体どんな顔をするだろうか。
嬉しそうに微笑んでくれる?いや。それはない。
多分気まずそうに、だけど少しだけ頬を染めながら…きっと君は困った顔をするだろう。
何故なら君が僕を男として見たことなど無いと知っているから。異性としてなど見られていない。
君にとって僕は、仲のいい幼なじみで友達だ。それ以上でもそれ以下でもない。それを僕は誰よりも嫌というほど知っている。
何度君を抱きしめたいと思っただろう。
何度その手を引いて君にキスをしたいと思っただろう。
何度…君をぐちゃぐちゃになるまで抱いてしまいたいと思っただろう。
この気持ちを伝えたら、きっと君はこの僕の真っ暗でドロドロとした感情から逃げていく。
そんなの許せるわけがない、そんな事受け入れられるわけがない。
君が僕の側からいなくなるなんて…想像もしたくないのだから。想像する事すら出来ないのだから。
最強の僕が『好き』というたったこれだけのことに…ここまで怯えているのだ。馬鹿らしくて嫌になる。きっと親友が聞いたら「最強が聞いて呆れる」と大笑いするだろう。
きっと彼女を好きにならなければ、こんな言葉一生言うことも…ましてや口にする事さえ気持ち悪いと思っていただろう。
だけど僕は彼女を好きになった。
どうしようもないほどに好きで
どうしようもないほどに手に入れたくて
そして、どうしようもないほど『愛しい』とそう思っているんだ。